労働問題

リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学: 玄田 有史 中田 喜文: 本

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リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学

リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学
 「過去最悪」の失業率や中高年のリストラ、若者の就職難など日本の雇用社会が大きく揺らぐなかで、「リストラは株価を上げる」「パートの増加が正社員の雇用を奪う」「年功制は非効率」「失業給付期間を延長すべきだ」といった議論が盛んに交わされ、実際の企業行動や政策論にも影響を及ぼしている。

   雇用問題の研究者らによる「労働経済学コンファレンス」の報告をもとに、1990年代の雇用や失業の実態を経済学の観点から明らかにした本書は、そうした「常識」を覆す刺激に満ちた内容になっている。

   雇用削減によって株価を上げた企業は、実際にいくつもあげられるが、本書はその真偽を測るために、イベント・スタディという手法を用いて企業による雇用削減のアナウンスと株式の超過収益率の関係を検証。業種、削減方法、削減規模、経営状況別の分析を行ったうえで、1993年以降は雇用削減が株価にプラスに働いたが、1990年代後半になると一概には言えなくなったこと、経常利益が増加している企業による「早期で前向きな『攻めのリストラ』のみが市場で評価されている」ことなどを明らかにしている。さらに、アメリカでは雇用削減が株価にプラスに働かないという興味深い事実も報告している。

   また、個々の大型小売店の分析から、そこにパート社員の増加と正社員の雇用減少という代替関係は当てはまらず、企業にとって代替のインセンティブも弱まっていること、繊維産業の分析から、年功制は企業業績を高め、雇用を拡大するという解釈が成り立つこと、失業者の求職行動の分析から、失業給付の延長は失業率をさらに高め、モラルハザードを生んでしまうことなども実証している。

   1990年代からの激変する労働市場に対する、初めての本格的な分析と実証の試みであるという本書。さまざまな「常識」を覆すだけでなく、中高年の再就職の成功には送り出し企業の積極的な関与が有効である点を導いたり、雇用創出と雇用喪失の背景に「同一事業所内部における雇用機会の活発な新陳代謝」があるのを浮き彫りにしたりなど、今後の問題解決に向けた議論に一定の方向性を示している。雇用問題に関する議論に一石を投じた、注目の1冊である。(棚上 勉)

内容(「BOOK」データベースより)

本書は、日本の雇用に生じている事実を経済学の観点から分析したものであり、証拠なき「常識」への挑戦である。多様なデータから詳細な実証分析を行い、真にあるべき雇用政策を検討している。

内容(「MARC」データベースより)

雇用削減は株価にプラス? パートの増加は正社員の雇用を奪うか? 日本の雇用に生じている事実を経済学の観点から分析し、証拠なき「常識」に挑戦する。多様なデータから詳細な実証分析を行い、真にあるべき雇用政策を検討。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

玄田 有史
1964年生まれ。東京大学大学院経済学研究科中退。経済学博士。現在、東京大学社会科学研究所助教授

中田 喜文
1955年奈良県に生まれる。Ph.D.in Economics(カリフォルニア大学バークレー校)。現在同志社大学マネージメントスクール長・教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次

「リストラ」と「転職」の新たな視点
雇用削減行動と株価
リストラ中高年の行方
中高年の転籍出向における成功要因
正規従業員の雇用削減と非正規労働の増加:1990年代の大型小売業を対象に
希望退職の募集と回避手段
年功的処遇と雇用
転職のメカニズムとその効果
失業給付によるモラルハザード:就職先希望条件の変化からの分析
失業者の再就職行動:失業給付制度との関係
雇用機会と労働の流出入
若年失業の再検討